冬至
(12月22日頃)
「静かな冬の夕ぐれ」
永瀬清子静かな冬の夕ぐれ
空は澄んだ土耳古藍色。木々の骨は舞踊を忘れてほの白くたちならぶ。
地上にうすやみが次第に濃くなる。
まだ春は来ない。
小さな時、見知らぬ人に連れ去られようとした時の記憶がふと思いうかぶ。
その時の頼りなく不安な心。しくしく泣きながらどう抗議していいか判らぬ心。家がだんだん遠くなるあせり。
半世紀以上も前の心が今と同じようによみがえる。
繊い三日月の光の中にそれは古い古いテープレコーダーのようにしまいこまれていたのか。